『3冠馬が出る年は3歳馬のレベルが低い』は本当か
今週、菊花賞トライアルの神戸新聞杯に無敗の2冠馬・コントレイルがいよいよ登場。史上8頭目、親子で無敗の3冠馬誕生に向かって始動しますね。ここで今回は過去の7頭の三冠馬のうち、古典となっているセントライト・シンザンは置いておきまして、3頭目以降のミスターシービー・シンボリルドルフ・ナリタブライアン・ディープインパクト・オルフェーヴルを振り返り、今年のコントレイルといろいろ比較してみたいと思います。だいぶ昔の思い出話になりそうですが。特に世代レベルについて重点的に掘り下げてみたいです。
ミスターシービー
父トウショウボーイ 母シービークイン 主戦・吉永正
2着 | 3着 | 着差 | |
皐月賞 | メジロモンスニー | インターリニアル | 1/2 |
ダービー | メジロモンスニー | ビンゴカンタ | 1 3/4 |
菊花賞 | ビンゴカンタ | シンブラウン | 3 |
後方一気が持ち味。菊花賞では2周目の坂で先頭に立つという豪快な勝ちっぷり。吉永正と共に人気の高かった馬ですが、翌年現れた皇帝・シンボリルドルフとの3冠馬対決で全敗しており、決して評価の高い3冠馬ではありません。ただ血統的にトウショウボーイ×シービークインなら完全に中距離馬なので、ルドルフ相手のクラシック~長距離戦が辛かったのは確か。ギャロップダイナが追い込みを決め、ルドルフが負けた天皇賞秋にシービーが出ていたら勝っていたかもと、今でも想像しますね。
クラシックの2、3着馬を見ると、メジロモンスニー・ビンゴカンタと、だいぶ渋い面々。メジロモンスニーは古馬になってからあまり使えず成績も今ひとつ、ビンゴカンタはその後準オープンの安定勢力レベル。世代そのものとしては、他にカツラギエース・ニホンピロウイナー・ギャロップダイナ・リードホーユーと名馬が揃いますが、どの馬も短距離・中距離という印象で距離は合わなかった感じ。クラシックレースについてはレベルは低かったと考えるのが通常でしょう。
シンボリルドルフ
父パーソロン 母スイートルナ 主戦・岡部幸雄
2着 | 3着 | 着差 | |
皐月賞 | ビゼンニシキ | オンワードカメルン | 1 1/4 |
ダービー | スズマッハ | フジノフウウン | 1 3/4 |
菊花賞 | ゴールドウェイ | ニシノライデン | 3/4 |
皇帝と称される7冠馬。プロフェッサー・岡部幸雄をして、「ルドルフに競馬を教えてもらった」と言わしめる名馬。個人的に好きな馬なので、つい感情が入ってしまいそうになりますが、ここは気持ちをおさえたいと思います。変幻自在、ペースに応じて巧みに脚質を変え、前年の3冠馬・ミスターシービーに3戦3勝、翌年の2冠馬・ミホシンザンにも有馬記念で楽勝と圧倒的な強さでした。
世代レベルとしては、スズマッハ・ゴールドウェイ・ニシノライデンは古馬になって重賞勝ち。その中でもニシノライデンは、失格2回などいろいろありましたが長く活躍。この世代では他に宝塚記念を勝ったスズパレードも長期休養もありつつ長く走りました。決してレベルの高い世代ではなかったものの、そこそこという感じでしょうか。ひとまずルドルフの力が圧倒的でした。
ナリタブライアン
父ブライアンズタイム 母パシフィカス 主戦・南井克己
2着 | 3着 | 着差 | |
皐月賞 | サクラスーパーオー | フジノマッケンオー | 3 1/2 |
ダービー | エアダブリン | ヤシマソブリン | 5 |
菊花賞 | ヤシマソブリン | エアダブリン | 7 |
シャドーロールの3冠馬。ビワハヤヒデの弟、最強の兄弟と言われました。外から豪脚を繰り出し各馬を圧倒。3馬身→5馬身→7馬身と着差がどんどん広がっての3冠は驚異的でした。古馬になって股関節炎を発症、能力が低下して苦戦したのは残念でしたが、マヤノトップガンとの年度代表馬対決となった阪神大賞典での復活劇は今でも語り草ですね。
映像も多少鮮明になってきました。世代レベルとしては、ここもそれほど高くないと考えるのが普通でしょうか。この世代のもう一頭の最強馬・サクラローレルはまだこの段階では頭角を表していませんでしたし、ヒシアマゾン・タイキブリザードは外国産馬でクラシックに出走できず(ヒシアマゾンは牝馬ですが)。エアダブリンがG1で人気になりながらあと一歩というところ。ニシノライデンくらいのレベルですかね。クラシック自体のレベルはそれほどでもなかったかなと思います。
ディープインパクト
父サンデーサイレンス 母ウインドインハーヘア 主戦・武豊
2着 | 3着 | 着差 | |
皐月賞 | シックスセンス | アドマイヤジャパン | 2 1/2 |
ダービー | インティライミ | シックスセンス | 5 |
菊花賞 | アドマイヤジャパン | ローゼンクロイツ | 2馬身 |
競走馬・そして種牡馬として伝説となった名馬。サンデーサイレンスの最高傑作。今さらこの馬について語る必要もないかなと思いますが、小さな体で上下動のない安定した走りで豪快に追い込み、圧倒して3冠達成。
クラシックのレベルとしては当時から激しく論議されておりましたが、私も決して高くはないと思います。シックスセンスがその後香港ヴァーズ2着、京都記念を勝って故障して引退と、あのまま走っていればかなり活躍していた可能性はありますが、クラシック組から後にG1で勝ち負けする馬はおらず、世代全体のレベルとしては、ひとつ上のキングカメハメハ・ハーツクライ・ダイワメジャー・コスモバルク世代の方が上と見るのが妥当かなと思います。ディープ自体はもの凄い馬なので、それで評価が下がることはないですが。
オルフェーヴル
父ステイゴールド 母オリエンタルアート 主戦・池添謙一
2着 | 3着 | 着差 | |
皐月賞 | サダムパテック | ダノンバラード | 3 |
ダービー | ウインバリアシオン | ベルシャザール | 1 3/4 |
菊花賞 | ウインバリアシオン | トーセンラー | 2 1/2 |
ワイルドな栗毛の怪物。3冠達成後のゴール過ぎに池添を振り落とすという破天荒さ。阪神大賞典での逸走などエピソード豊富ですが、凱旋門賞2年連続2着、引退レースの有馬記念で8馬身差の圧勝。最終的に完成して引退した印象。こちらも言わずもがなですかね。
世代レベルとなると、サダムパテック・トーセンラーがいずれもマイルCSを勝ち、ベルシャザールはダートに行ってジャパンカップダート制覇。別路線に活路を見いだしていった印象。ウインバリアシオンはその後に有馬記念でもオルフェーヴルの2着してますが、G2戦での苦戦も多く評価は微妙なところ。
今年のレベルについて
あとで振り返ってみていろいろと分析する話なので、現段階で判断はなかなか難しいですが、今のところの印象としては今年の世代レベルはそれほど高くない雰囲気が漂っていますね。レベルが低めの年は、だいたい皐月賞の時から勢力分布図が変わらないことが多いです。これが3歳になってぐっと成長してくる馬が現れたりするとレベルが上がってくるんですが、今年は2歳G1馬のコントレイルとサリオスが他馬を大きくリードした状態のまま秋。
これならコントレイルがそのまま菊花賞もさらっていく可能性は高いかなと思います。やはり過去の3冠馬を見ていくと、ある程度他の馬との実力差がないと、皐月賞・ダービー・菊花賞という全く違う個性が必要な舞台で勝ち続けるのは困難。しかも皐月賞・ダービーと2着に入ったサリオスが毎日王冠へ向かって菊花賞回避となれば、俄然実力でリード。あとはラジオNIKKEI賞・セントライト記念を連勝したバビットや、神戸新聞杯でコントレイルを苦しめるような馬が出てくるかどうかですね。
まとめ
ということで、長い文章になってしまいましたが、最後まで読んで下さってありがとうございました。ひとまず神戸新聞杯のコントレイルの走りと、他の馬との差に注目ですね。過去の名馬についていろいろ書くのが楽しかったので、また別の機会にコラム風のものも書いてみたいと思います。